中国で全能神という新興宗教が暴行事件を起こしネットで動画も公開され衝撃が広がっています。

全能神は「東方閃電」とも呼ばれ、1991年にキリスト教の一派として黒竜江省にて誕生したと言われその創始者は1951年に黒竜江省で生まれた趙維山と呼ばれる人です。もともとはキリスト教の一派で現在でもその流れを汲んでいるようですが、一般的なキリスト教とはあきらかに異なり、独自の教会を設立し、他のキリスト教系団体からも異端視されています。

強い組織力を持ち、入信すると金銭が支給されるらしく、貧困層を中心に信者を増やしているようですし、中国共産党を嫌って海外移住をする人たちからも支持を得ているようで、中国国内に300万人ほどの信者を擁し、拡大中であり、海外では日本やアメリカ、カナダ、シンガポール、韓国、インドネシア、マレーシアなどに支部が設立されていて日本には東京に支部が置かれていて特に在日を中心に勧誘が勧められているようです。
また脱退することはとても難しいようです。

マクドナルドで全能神の信者が起こした暴行事件はマクドナルドで信者が行っていた勧誘活動に女性が拒否したことで口論になり女性に対する集団的な暴行へと発展したようですが、女性はスチール製の椅子で殴られた後、倒れ込んだ後、頭部を激しく蹴られ、ステンレス製のモップで持ち手が折れるほど何度も執拗に頭部を殴られたようです。残念なことに、マクドナルドの前に警察署があったにもかかわらず、事件を止めることが出来なかったようで女性は死亡しています。

これまでにも全能神の信者によって集団殺人があり、全国で1000人近くが中国当局によって逮捕されているようです。

何ともいえない事件ですね。本来宗教とは愛や平和をもたらすものであるはずです。それが自分たちの信条に固執するあまり、恐ろしい凄惨な事件にまで発展するのは残念なことです。もちろん今回の中国の全能神に限らず、中東問題や世界各地で生じているテロ事件を引き起こしているすべてのカルト問題に当てはまると思います。

もちろん宗教自体が問題なのではなく、入信している信者に問題があるということもあるでしょう。宗教が政治的に利用されるということもあるのだと思います。

今回の全能神も中国共産党に不満を持つ人たちを中心に支持を集めているようです。現行の政治形態を変えたいという人たちの願望と宗教の教えとが一致し、入信者が増え、でもそのような入信者の真の願望は政治を変えることにあるので、宗教の名の下に大義名分を得てあのような過激な行動が生まれているのかもしれませんね。

全能神は中国共産党を『巨大な赤い龍』と呼んで敵視し、これを倒して新政府を樹立する事をめざしているようです。また、全能神を信じるものだけが救われて信じないものはすべて滅ぼされると信じ、「護法隊」なる実動部隊によって入信を断った人や脱退を願う人たちに暴力を振るう事件が起こっているようです。このような現状から中国当局は全能神を邪教指定し警戒を強めているようです。

全能神はキリスト教の影響を受けているようですが、確かに聖書には緋色の野獣や龍は悪魔サタンを表し、黙示録によるとハルマゲドンにおいては緋色の野獣や龍は神によって滅ぼされるという事が述べられています。その後は神の国が全地をおさめ平和が実現するという事ですが、何と言っても中国の象徴である国獣は龍です。古代から皇帝のシンボルに龍はなっていましたからこのキリスト教の教えは中国政府に不満を持つ人たちにとって受け入れやすいものとなっているのかもしれませんね。国家を倒して自分たちを救ってくれるという教えですから中国当局としてはほっておく事は出来ないでしょう。

ただ、聖書にある龍を滅ぼす者は神であって信者じゃないと思うのですよね。イエス・キリストは「剣をとる者は剣によって滅びる」と述べていますし、「右のほほを平手打ちする者には別のほほをも向けなさい」とまで述べていて信者が戦争に加わる事を認めていませんし、そもそも、龍は中国当局の事ではありませんから、もし全能神の信者がそのような信条に基づいて報道されているような事件を本当に起こしているのであれば全くの勘違いだと思いますけどね。犠牲者の方達が本当に可哀想ですね。

もっとも、このような事件の背後にはこれまでもあったように中国当局の保身のための情報操作という事も考えられなくはありません。中国当局を脅かすものを弾圧するために末端の不祥事を取り上げ、組織全体を弾圧するということもあり得ると思います。

ですから、事情がはっきり分かるまで極端な見方で特定の組織や個人を見ないようにもしないといけませんね。

偏見が悪感情を生み、悪感情は暴力行為に発展しますから。。。