ジャパニーズR&Bをここまで日本に浸透させ、且つビジネス的にも成功を収めているという点で、久保田利伸さんはやはりジャパニーズR&Bのパイオニアと呼ぶことが出来るでしょう。

わたしも彼がデビュー当時からCDを聴き(当時はカセットでしたが。。。)デビューアルバムの

『SHAKE IT PARADISE』には

衝撃を受けたものです。

このアルバムだけは彼自身も売れることを考えたと述べているようにR&B的な要素を十分に残しつつ、それまで日本でヒットした同じ匂いの楽曲のテイストも感じさせ、なおかつ新しいと思わせるとっても良く出来たアルバムだと思います。アップテンポな曲とバラード曲のバランスもよく、アルバム全体を最後まで飽きることなく楽しむことが出来ます。

収録されている楽曲の中のいくつかはデビュー前、なかなかデビューできなかった時にしびれを切らして作成した伝説の『すごいぞテープ』の中に入っていた曲もあり、このテープは当時業界で話題となり久保田利伸の存在を業界に知らしめ、デビューに繋がったという経緯もあります。この『すごいぞテープ』は今もダビング品がオークションやインターネットで出回っており聴くことができるようになりましたが、当時は超レアなものだった記憶があります。ステービーワンダーのカバーやウィーアーザワールドの一人カバーなども収録されており今でもっとっても興味深い内容ですが、当時は衝撃的でした。このカセットテープのA面に収録されていた楽曲が『SHAKE IT PARADISE』でリメイクされて収録されています。

『SHAKE IT PARADISE』

収録曲

01:流星のサドル

02:Olympicは火の車

03:Shake It Paradise

04:Missing

05:失意のダウンタウン

06:To The Party

07:もうひとりの君を残して

08:Somebody’s Sorrow

09:Dedicate(To M.E.)

10:Inside カーニバル

11:For You~伝えきれなくて

今聴きなおしてみると、やはり時代を感じますね。ギラギラ感のあるDX7的な音色はバブルの頃を思い出します。また久保田利伸さんの声はとっても若々しく、可愛くも感じます。わたしはこの頃よりも今の歌声のはるかにいいと思うのですが、ネットの評判をみると今の歌声よりもこの頃の歌声の方がいいという声をよく見かけますね。確かにこの頃の方が声が澄んでいて奇麗ですけどね。でもちょっと可愛すぎますよ。ソウルやR&Bというには。

今の方がはるかにそれっぽい歌声ですよ。

もちろんこの頃の歌声もしっかりと要所要所にブルーノートを取り入れてインプロビゼーションしていたり、スキャットやラップ、フェイク、コーラスワークなどソウル、R&Bのテイストを十分に感じさせる歌声を聴かせてくれています。当時20代だと思いますから、恐るべしですよね。

またこのアルバム、レコーディングには武部聡志さんらユーミンクルーと中村哲さんら山下達郎クルーが参加しているという点でもその他のアルバムとは少し違った雰囲気を与えているのかもしれません。

わたし自身はこのアルバムではゴダイゴのモンキーマジックに似ているという噂の「流星のサドル」などのアップテンポの曲もいいですが、「Missing」はもちろん「もうひとりの君を残して」「Dedicate(To M.E.)」「For You~伝えきれなくて」といったバラードもっとってもいいです。特にこの「For You~伝えきれなくて」はアルバムの最後の余韻のようになっていて、こういう短めの弾き語りバラードをアルバムの最後にもってくるのっていいですよね。ちなみにこの「For You~伝えきれなくて」はオペラ歌手の錦織健さんがアルバムでカバーしていて日本の古き良き歌の中にこの曲が取り上げられていてとっても印象的でしたよ。